理想的な行程の強度を考える


1.はじめに

 こんにちは、2回生の原田19です。テストが近づくと何故かどうでもいいことをしたくなりますよね。昨日オンラインであったツアーの作り方講習会での行程の強度についての話を聞いて、唐突に理想的な行程の強度を計算したくなったので記事にしてみました。テスト勉強の気分転換にでもしてください。

 最近知ったばかりですがパワートレーニングという理論と組み合わせて理想的な行程の強度を考えてみようと思います。パワートレーニングとは、自転車を動かす出力のデータを生かしたトレーニング方法のことです。その理論に、オーバートレーニングを防ぐために強度を数値化するという方法があるので、これをKUCCのツアーにあてはめてみようと思いました。

 仰々しいタイトルになっていますが、僕はパワートレーニングというものについて勉強し始めたばかりであまり詳しくなく、ネットで拾った情報と浅い知識に基づいて書いているので(一応確認はしていますが)、もし違うよということがあったらお知らせ下さい。


用語解説(そんなに深く理解しなくても多分大丈夫です)


 FTP(Functional Threshold Power):60分全力漕いで維持できる出力

 NP(Normallized Power):運動強度を表せるよう補正したパワー値。計算はややこしいので省略

 IF(Intensity Factor):運動強度。IF=NP/FTPで計算


  TSS(Training Stress Score):トレーニング負荷の数値。

   TSS=(時間)*(IF)^2*100  IF:運動強度


2.方針

  ツアーのTSS(強度の指標)を計算して行程の強度を距離、アップ数、標高差から概算してみようと思います。こちらのサイト(https://diary.cyclekikou.net/archives/12390)の計算をかなりパクリ参考にさせていただきました。以下に手順を示します。

 

①乗っている人が自転車にかける推進力をFとして、これを運動方程式から求め、距離で積分してWを計算する。

②WからTSSを計算する。1日で体力が回復するのはTSS<150で、ツアーの他の負荷(例えば野宿など)を考慮して、TSS=100を長期的なツアーの強度の目安とする。


3.計算

 自転車の抵抗力として、重力による抵抗Fg、空気抵抗Fa、路面抵抗Fr、駆動系の抵抗Fdを考えます。

 まず運動方程式よりF-Fg-Fa-Fr-Fd=ma   m,:質量(ここでは体重とチャリと荷物の重さの合計)a:加速度

 伝達損失は推進力の5%とされているので、F-Fd=0.95F

 変形して、F=(ma+Fg+Fa+Fr)/0.95

 また、W=∫(0→D)Fdxより各抵抗によるそれぞれの仕事をFの代わりにWで書くと、

 W=(∫(0→D)madx+∫Fgdx+∫Fadx+∫Frdx)/0.95

 各項について、分けて考えていきます。


(I)運動エネルギー∫madxの計算

            a=dv/dt より、∫madx=∫m (dv/dt)*( dx/dt) dt

                (中略)

                                                   =1/2 m(v1^2-v0^2)


(II)重力に対する仕事∫Fgdxの計算

            これは簡単です。Wg=mgh

                (g:重力加速度、h:上昇した距離)


(III)空気抵抗に対する仕事∫Fadxの計算

            これは一番むずかしい気がします。取りあえずFaの式は、調べてたら別のタイプの式もありましたが、次の式を使います。


     Fa=g*0.00007638*体重0.425*身長0.725*ポジション補正係数*空気密度補正係数*速度2


        書いててめんどくさくなってきました。KUCCのツアーはザックを後ろにつけてるので、ポジション補正係数を調整しなくてはなりませ    ん。乗車時の前面投影面積を測ればある程度推測できると思いますが、面倒くさいので1.7という数字を使います。(この理由については一番最後に)

     また、空気密度補正係数ですが、これは標高によって空気密度が変化することによる空気抵抗の変化で、exp(-0.000118*h)と近似できます。GPXデータとかを上手く使えれば正確に求まるとは思いますが、今回は距離、獲得標高などの簡単な数値のみから出したいのでhを行程全体の平均の標高とします。よって、係数をまとめて

        Fa=1.27E-3*体重0.425*身長0.725*exp(-0.000118h)*速度2

体重、身長、平均標高が与えられたら速度以外定数と見なせるので、これをkaとおくとFa=ka*v2

    Wa=(中略)=ka*(v0^2+v1^2)/2 D (Dは距離)

途中で書くのが面倒になったので中略の部分が気になったらこちら    (https://diary.cyclekikou.net/archives/12390)を参照してください。


        (IV)路面抵抗に対する仕事∫Frdxの計算

路面抵抗は傾斜によっても変わりますが、細かい区間の傾斜を考慮するのは大変なので、

            (行程全体の傾斜θ)=arcsin[(獲得標高)*2-(標高差)/(距離)]

        を使って概算します。(獲得標高)*2-(標高差)という部分は、上り下りの合計のつもりです。これを使い

            Fr=kr*m*g*cosθ

        krはロードタイヤの転がり抵抗係数で、ツアーで使うマラソンタイヤはこちら(https://www.bicyclerollingresistance.com/)によると0.0075くらいのようです。この   数字を使って、

            Wr=kr*mgcosθ*D

  

   (V)合計

        以上黄色でハイライトを付けてる式を使って、v1=V(平均速度),v0=0を代入して合計すると、

                    W=(1/2 mV^2+mgh+ka*V^2/2 D+krmgDcosθ)/0.95

        ただしmは人、自転車、荷物の合計重量、hは獲得標高


4.実際の値を代入

 試しに僕の数字を入れてみます。空気抵抗はソロを仮定してしまっている(トレインの計算はできない)ので、去年のポス夏信州で富士スバルラインを登った日の値を代入してみます。ちなみに感覚的にはかなりしんどかったです。

 165km,2777up,標高差-120m,m=63+13+15=91kg,大体10時間くらいかかったのでV=16.5,平均標高900m,標高差-120mとすると、

   W=4566266J、W/t=126.8407J/s

 これをNPとします。当時のFTPを山中のタイムから見積もると、だいたい250Wだと思うので、この時TSS=285.2となります。

 TSSがこれくらいの値のとき、2日後回復すると言われていますがこの日は疲労がかなり残ったのでまあ妥当な気がします。

 次にこの前花脊を登った時のデータで計算すると282Wという値が出て、パワーメーターの実測が287Wだったので結構いい精度で計算できている気がします。

 

 最後に、今度は講習会のアンケートの平均として紹介されていた、100km1600up高低差0、平均標高500mの行程をAve.15km/hくらいで行くときのTSSを計算してみたいと思います。

 この時今の僕の数値を代入すればTSS=100.1442となり、トレインを組めば負担を軽減できるので、これはかなり理想的な強度と言えるのではないでしょうか。しかし夏合宿のような長期ツアーではあまり自転車に乗りなれていない1回生が多く、これでも自転車以外の要素もあって疲労は溜まっていくと思うのでこれが連日続くのは良くないかもしれませんね。

 この方法問題はFTPを測るのが難しい点ですが、山中が大体20分くらいで、FTP=20分の最大出力*0.95なので山中を全力で登って代入したら概算できます。


  5.おわりに

 本来すべきテスト勉強をサボって突発的にこんな文章を書いてしまいました。僕が単位を落としたら笑って下さい。

 おまけとして、条件を入れたらTSS(Tour Stress Score)を計算してくれるExcelシートがあるのでよかったら使って下さい。(https://www.dropbox.com/scl/fi/ptyz57ez2kyvx7zpegk3u/.xlsm?dl=0&rlkey=rkce5xlnrts0ow80tozgbofum)

 使った上で感覚と合っていたとかのフィードバックや改善点があれば送ってください。

参考

https://www.tktrytokona.com/entry/2018/12/27/203253#TSS

https://diary.cyclekikou.net/archives/12390

https://www.bicyclerollingresistance.com/(タイヤの転がり抵抗の値はこれを参考にしてください)

http://sciencetips.web.fc2.com/theory4.html

https://nujonoa.com/cruise-output-of-road-bike/#toc6

http://module.jp/dist/Change_of_A_by_the_riding_position.pdf

https://www.qbei.jp/info/bicycle-maintenance/4476#i


補足:ザックをパッキングした自転車の空気抵抗ポジション補正係数の推定

 こちら(http://module.jp/dist/Change_of_A_by_the_riding_position.pdf)によると、ロードバイクに乗った人がルーズな姿勢でブラケットを握っているとき、前面投影面積は0.4046m^2であるそうです。ザックをパッキングした自転車はこれに加えてザックの両端が飛び出ています。飛び出た部分の前面東映面積を20cm*30cmの長方形とすると、その他もろもろ(服やタイヤの太さ)を加えて0.55m^2になると仮定しました。(ちゃんと測ろうと思えば測れそうだけど結局個人差があるし面倒なのでパス)

 次に、ポジション補正係数は下ハンの時1,ブラケットポジションの時1.25と与えられています。空気抵抗は前面投影面積に比例するので、下ハンの時の前面投影面積、ブラケットポジションの時の前面投影面積を用いて補正係数を求められます。

下ハンの時0.3819m2,ブラケットの時0.4046m^2なので、

K=1.25/1*0.3819/0.4046とすると、ザックパッキング時の0.55m^2での係数をLとして、

K=L/1*0.3819/0.55

これによってLを計算すると、L≒1.7となります。今回はこれを使いました。