冬季シベリアツアー企画

冬季シベリアツアー企画


2018.2.26追記 

シベリア班報告 も合わせてご覧ください



・はじめに

今回のツアーを行うにあたってmont-bell 様とイスカ様から支援を頂きました。衣類は主にモンベル社のものを、シュラフはイスカ社のものを使用させていただきます。この場を借りてお礼申し上げます。





・活動内容

シベリアのジムニックを自転車で走破します。ジムニックとは零下数十度という気温の低さによって 生まれた冬季のみに存在する道のことで、気温の上昇とともに消え、湿地や河川に戻ります。夏場は沼地や湿地帯のために通行不可能なところも冬は凍結によって通行可能になります。今回の冒険では現在地 球温暖化により縮小傾向にあるジムニックの地理的観察を行うとともに、5人の班員と協力してキャンプ と民泊をしながら北極圏まで自転車で到達します。行程はヤクーツクに始まり、ベルホヤンスキー山脈を越えて寒極であるベルホヤンスクを目指すものです。ベルホヤンスキー山脈越えは距離にして1300km、気温は約−40℃、町や村といった補給地点のない約800kmの区間では約10 日分の食料を自転車に積み、主に自炊とテント泊で北極圏を目指します。





・活動目的

1:居住地として世界一の寒冷地に赴き、未知の環境での自分と自転車の可能性を探る


2:地球温暖化により縮小傾向にあるジムニックの地理的観察 


3:民泊することで現地の人々と交流し、文化に触れるとともに冬ならではの冒険に赴く 


4:冬季シベリアの低温環境やジムニックと呼ばれる氷上の道路に適応する自転車走行のノウハウ、技術を培う





・班員

山本直哉(企画)(24) 衣川佳輝(22) 松谷和輝(22) 加藤宏章(21) 





・スケジュール

2月10日19時 境港発ウラジオストク行(フェリー)

2月12日 ウラジオストク着

2月13日 ウラジオストク発トンモト行(シベリア鉄道)

2月15日 トンモト着

2月16日  トンモト~ヤクーツク(バス輪行)

2月18日  ヤクーツク~ベルホヤンスク着(自転車)

3月初旬 ベルホヤンスク~ヤクーツク(バスorトラック)

3月20日ヤクーツク~日本(飛行機) 



フェリーで鳥取県境港からウラジオストクまで移動し、次にシベリア鉄道でウラジオストクからトンモトまで移動します。トンモトからヤクーツクへはバスで輪行、ヤクーツクにて装備の確認や現地での食料を買い出します。ヤクーツクは人口 20 万人近い大都市であり物資が豊富にあると予想されます。ヤクーツク以降は、自転車とテント泊でベルホヤンスクを目指します。ベルホヤンスク到着後、トラックもしくはバスにてヤクーツクまで戻り、ヤクーツクから飛行機で帰国します。






・現地での装備

〈全体装備〉(班の共有物として分担)

・ガソリンストーブ 3台、ガソリンボトル 2 本(ペットボトルも併用最大10リットル)、ガソリン

・火打石、マッチ

・テント(ジュピタードーム6 型)、フライ(スノーフライ)、テントポール

・コッヘル大 2 セット、調味料、葛根湯×24 袋、ビオフェルミン 1 瓶 ・自転車関連(チェーン切り、アーレンキー(4m5m6m)×2 セット、インフレーター3 台、スポーク、スプ

ロケ抑え外し、ハサミ、ペンチ、タイヤレバー(金属)、チューブ(仏式 8 本)、替えタイヤ 2 本、ブレーキアウターケーブル 1、インナーケーブル 1、シフトアウターケーブル 1、インナーケーブ ル 1、クイック100mm,135mm、クランクキャップ、クランクキャップ外し、タイヤブート 3 枚、パ ンク修理パッチ 15 枚、チェーンオイル、シートクランプ、キャリアネジ×10 本)

・爪切り、ダクトテープ、ソーラーパネル、結束バンド 100 本

・電池(アルカリ 12 本、エナジャイザー4 本) 、C 型変換プラグ 2 個、たこ足コンセント、

・VBL 用ゴム手袋 80双



〈個人〉(班員によって少し異なります)

・パスポート、パスポートコピー、学生証、ノート、ペン、時計

・クレジットカード、現金、財布

・iPhone、充電器、タッチペン、大容量モバイルバッテリー

・カメラ(一眼レフ、コンデジ)カメラバッテリー×4

・自転車関連(RD ハンガー、スポーク数本)

・シュラフ(イスカデナリ 1100)、シュラフカバー、コンプレッションバック、シュラフ VBL 用袋 2 枚、

エアマット ・衣類(ドロワットパーカ、アルパインダウンパーカ、トレールアクションパーカ、トレールアクションタイツ、ジオラインタイツ、インシュレーテッドアルパインパンツ、ジオライントランクス、ジオラインエクスペディションソックス、ノーマルソックス、クリマバリアグローブ、ジオラインインナーグローブ、クリマプラスアクションワンピース、速乾性 T シャツ、ジオラインハイネックシャツ 2 枚、ネオプレンフェイスバラクラバ、ニット帽)

・サングラス、ゴーグル、ザック(75 リットル)、スノーブーツSORELグレーシャーXT(-70°C対応)、防寒テムレス、ヘッドライト

・エマージェンシーシート、本

・トイレットペーパー、歯ブラシ、剃刀、ビニール袋

・魔法瓶、ハイドレーション 1.5l、コッヘル、スプーン、非常食(コンデンスミルク 4 本、板チョコ2枚) ・自転車 Centurion backfire pro

(スパイクタイヤ装着、ブレーキメカニカル化、フロントシングル化(FD は取り外す)、ワイヤーフルアウター化、BBハブヘッドの不凍グリス交換)






・寒さに対する主な対策

寒さには主に VBL 防寒システムで対応します。

VBL とは「Vapor Barrier Liner」のことで、アラスカなど極寒地で採用されている防寒システムです。 現在では多くの極地探検や 8000m 級登山、厳冬期のアルパインクライミングなどで用いられています。仕組みはビニール手袋やネオプレンソックスを装着し皮膚表面の湿度を100%にすることで、発汗作用を抑え気化熱を発生させず、体温の低下を防ぎます。またVBLシステムを採用することで衣類やブーツ、シュラフが汗でぬれ、それが凍り使用できなくなる問題も解決します。 使用するのは走行中の手足と就寝中の全身です。走行中の VBL は体温の過度な上昇を招くため全身では行わず、手足のみとなります。





・計画を立てるに当たって

・〈安東浩正氏〉

2003 年に植村直己賞を受賞し、2002 年の 14927km 冬季シベリア単独自転車横断と 2005年冬季シベリア単独自転車縦断を成し遂げた安東浩正氏の装備をベースとして計画しています。


・〈OB〉

京都大学サイクリング部は 1973 年総部で今年 45 周年を迎えます。海外自転車遠征は 1973 年のカナダに始まり、毎年様々な海外ツアーが企画されています。国内冬季のツアーも毎年行われ、70 名近くいる部員の半分近くはスパイクタイヤを履いて雪道を走り、低気温下での野宿やメカトラブルへの対処方法などノウハウが蓄積されています。海外ツアーはヨーロッパや中国や東南アジアが主流ですが、1991 年冬北米横断、1991 年冬アラスカ、1996 年カナダ、1998 年 9 月サハ極東ロシア、2001 年冬アラスカ、 2004 年冬シベリア、2005 年 11 月北欧北極と 0°Cを下回る地域でも行われています。ツアーの報告書と して毎年部誌が発行されており、ツアー時の装備や現地での出来事や注意点が綴られています。

今回参考としたのが2004年の冬シベリアで、実際に行ったOBの先輩と連絡をとり行程や装備などの 助言をいただきました。2004 年も最低―47°Cまで下がったようでその時の体の動きや防寒、自転車の走 行など非常に参考になりました。お話を聞くかぎり装備面に関しては技術の進歩によって当時のものよ りもかなり品質の高いもので今回冬シベリアに臨めるようです。

2004 年の冬シベリアの行程は以下のものになります。 

富山県伏木港→ウラジオストク→(シベリア鉄道)→スコロボディノ(ここから自転車)→ティンダ→マゴッ ト→スタノボイ山脈越え→ベルカキト→ネシュングリ→アルダン→トンモト→ヤクーツク

この行程は我々が今回降りるシベリア鉄道の駅よりも手前で降り自転車で走りだしています。移動する ルートは同じのため我々が自転車で走行する区間であるトンモト~ヤクーツク間で被っています。











・出発に際して

安東浩正氏曰く 「冬季のツーリングは、冬山登山のようなものです。静寂な白一面の雪原を走りゆく時、雪面が陽光に輝く時、そこにはそこにしかない感動が隠されています。あるいは様々な試練、たとえば寒さとの戦い、 気象条件の厳しさ、凍結した路面、積雪時の担ぎ、短い日照時間、ルートファインディングといった特殊 な技術も必要になってきます。」



今回冬季シベリア自転車遠征に臨む我々4名は、決して十分とは言えませんが、海外遠征や国内の冬季自転車担ぎ登山、ツーリングを経験してきてきており、冬季シベリア遠征も実現可能であると考えております。冬季シベリア遠征の計画が具体的に出来上がってきたころから、装備や自分自身の低温下での運動能力などを国内の豪雪地域や―20°C以下になる高所に向かうことで実際に確かめてきました。その 上で各自装備の可否や課題を見つけ、全体で共有することで、冬季シベリア遠征はより確実なものへと近づいてきています。