8月20日 河田班定時連絡

「あ、高石さんこんばんわあ、定時連絡をしまあす」

と例によって酔っ払いみたいな声で電話をくれたのは東北班の河田でした。分かりやすいね。

「今日の行程はぁ、えっとどこでしたっけ?」

道の駅とうわ→遠野

の40㎞フリーです。しっかりしてください、班長。河田はカッパ淵で2時間カッパを張ったそうですが、終ぞ現れることはなかったそうで残念がっていました。最近はきゅうりではなくピーマンを餌にしてカッパを釣るそうです。時代は回りますね。

今晩は麻婆豆腐だそうです。遠野といえばジンギスカンが有名ですが、ジンギスカンはビール園までとっておくとのことでした。

面子は4回生橋本、3回生万力、久保田、2回生河田、高野、1回生鈴木、岡本

で西田が北海道班へ向けて離脱、青田は一足先に大槌町まで走り震災の傷跡をじっくり見ていたようです。

1回生の鈴木は一旦花巻まで戻り、宮沢賢治記念館を見学した後、遠野まで走り、遠野物語の記念館に入ったそうです。童話、民話の世界に浸っていたようで「子どもに戻れた気がした」と満足げでした。流石文学部の感性といったところでしょうか。意気込みとして

「明日はきついみたいなんで死なないようにしたいです」と語ってくれました。銀河鉄道に乗ってしまわぬよう気を付けてほしいですね。

班長はどんな人?との質問には「毎日酒で倒れる人」と端的に回答してくれました。古き良きサイクリング部員像を踏襲していて大変よろしいのではないでしょうか。

同じく1回生の岡本はダラダラ遠野まで走り、遠野でトウモロコシ、ジンギスカンを食べ4時間の風呂グダを敢行したそうです。なかなかいい行程ですね。「昨日わんこそばを食べられなかったんでジンギスカンを食べました。くっそおいしかったです。」とのことです。わんこそばよりジンギスカンの方が数倍幸せですね。岡本が勝ち組でしょう。

「班長はどんな人?」には「僕と一緒に走ってくれる人です。僕、遅いんで…」と班長らしさを発揮していることを教えてくれました。

「まあ、感謝はしてますけど」と言う一方でこんな注文も。

「もうちょい計画的に」

突然フリーになったり、かと思えばフリーが消えたり、振り回されているようです。とはいえ夏合宿は究極的に班長のもの(異論はあるでしょうが)。ウダウダ言いつつ付いていくのもまた夏合宿らしいと言えるでしょう。河田は振り回し続けたらよいのではないでしょうか。

 

そして、我らが11年度入学生で現在唯一夏合宿参加中である橋本(11)にもお言葉をいただきました。東北にいようとも橋本は橋本であり、橋本以外の何ものでもないことを再確認させられました。流石の安定感です。

私「3回生がうるさくてストレスたまっているみたいだけど?」

橋本「西田が減ってましにはなった」

私「東北はどうよ?」

橋本「いや別に。特にない。ただ遠野は文化の砂漠やな。本屋もなければ娯楽もない。あるのはパチンコ屋くらい。高齢化でじいさんばあさんしか住んでないんやろな。消滅しかけてる。」

橋本の考察は更に進みます。

橋本「遠野はいつまでも遠野物語にしがみついてたらダメやろ。そんな程度の伝承そこらじゅうに溢れてる。それを柳田國男がちょいと発掘したからと言って騒ぎ過ぎ。」

終いには「遠野には向上心がない」と強烈な一言。

実に夏目漱石的なコメントです。ちなみに某全国紙では現在「こころ」 を絶賛連載中です。物語は佳境、いよいよ御嬢さんをめぐる先生の葛藤は頂点に達しようとしています。久々に「こころ」を読みたい方は是非!

また、途中キャリアが壊れたということで詳細を聞いてみたところ支えの棒が一本折れた程度で背負えるだけの荷物はサブザックに入れて背負いキャリアへの負担を減らしてなんとかなっているとのこと。ダウンで傾け過ぎたのが崩壊の原因だろう、と述べていましたが本当にそうでしょうか?

 

橋本との長話を打ち切り、班長へ電話を戻すよう頼んだところ河田は寝てしまったとのこと。鈴木の観察は大変的を得ていたようです。仕方がないので橋本から明日の行程を聞きました。多分

遠野→笛吹峠→大槌町→リアス式海岸→とどヶ崎(本州最東端)→宮古

だそうです。割と大変そうな行程ですね。リアス式海岸のことは嫌いになっても東北のことは嫌いにならないでほしいと思います。

高石(11)